監修:行政書士 渡邉徳人(行政書士事務所WITHNESS 代表・熊本県行政書士会 第05430405号)最終更新日:
建設業の許可を取るには、次の6つの要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると許可は受けられません。また、許可を取った後も要件を満たし続ける必要があり、欠けると許可の取消しの対象になります。
このページでは、熊本県の「建設業許可の手びき」と建設業法にもとづいて、それぞれの要件をくわしく解説します。
- 1. 経営業務の管理を適正に行う能力建設業の経営経験がある常勤の役員(個人は本人など)がいる
- 2. 社会保険への加入健康保険・厚生年金保険・雇用保険の届出をしている
- 3. 営業所ごとの営業所技術者資格や実務経験のある技術者が、営業所に常勤している
- 4. 財産的基礎一般建設業は、自己資本500万円以上など
- 5. 誠実性請負契約で不正・不誠実な行為をするおそれがない
- 6. 欠格要件にあたらない破産・刑罰・許可取消しなどの事情がない
このほか、実際の申請では、建設業の営業を行う「営業所」があることも確認されます(営業所について)。
1. 経営業務の管理を適正に行う能力(経営業務の管理責任者)
建設業の経営は、ほかの業種と大きく違うため、建設業の経営経験がある人が最低1人は必要とされています。法人なら常勤の役員のうち1人、個人なら本人または支配人のうち1人が、次のどれかにあたる必要があります。一般に「経営業務の管理責任者(経管)」と呼ばれます。
1人で要件を満たす場合
- 建設業の会社の役員や個人事業主として、経営業務の管理責任者の経験が5年以上あるいちばん多い認められ方ですその5年間に建設業を営んでいたことを、確定申告書や工事の契約書・注文書などで証明します。
- 役員に次ぐ立場(執行役員など)で、経営業務を執行する権限の委任を受け、5年以上経営業務を管理した経験がある個別に審査されます
- 役員に次ぐ立場で、6年以上経営業務の管理責任者を補佐した経験がある個別に審査されます実例は補佐経験で経営業務管理責任者(経管)の申請をした事例をご覧ください。
補佐する人と組み合わせる場合(体制で満たす)
常勤の役員が上の経験に足りない場合でも、次のどちらかの役員に、財務管理・労務管理・業務運営の経験が5年以上ある人を「直接補佐する人」として置けば認められます(1人が複数の経験を兼ねることもできます)。いずれも個別に審査されます。
- 建設業の役員の経験が2年以上あり、かつ、役員または役員に次ぐ立場(財務・労務・業務運営の担当)の経験が合わせて5年以上ある役員+ 補佐する人
- 役員の経験が5年以上(建設業以外を含む)あり、そのうち建設業の役員の経験が2年以上ある役員+ 補佐する人
令和2年10月の法改正で、以前の「同じ業種なら5年・ほかの業種なら7年」という区別はなくなりました。建設業であれば、業種を問わず経験として数えられます。
ここでいう「役員」は、株式会社・有限会社の取締役、指名委員会等設置会社の執行役、合同会社などの業務を執行する社員、法人格のある組合などの理事です。監査役は含まれません。
常勤であることの確認
経営業務の管理責任者は、申請する会社に常勤している必要があります(営業所技術者も同じです)。ほかの会社の役員や社員として常勤している人は認められません。申請のときは、その人がこの会社の健康保険・厚生年金保険に入っていることを、年金事務所から届く「標準報酬決定通知書」などで確認します。くわしくは常勤性の確認書類をご覧ください。

- 1会社名・所在地が、申請する会社と同じか
- 2経営業務の管理責任者・営業所技術者の名前が載っているか
- 3年金事務所からの通知であること
※ 見本は架空の内容です。実物とは配置や項目が少し異なる場合があります。画像を押すと大きく表示されます。
許可を取った後に、経営業務の管理責任者がいなくなると
退職などで後任がいない期間ができると、許可の要件を満たさなくなり、許可の取消しの対象になります(建設業法第29条第1項第1号)。役員の任期や退職の予定を早めにつかみ、要件を満たす後任を準備しておくことが大切です。実際にあった例は実際にあった建設業許可の取消し事例で紹介しています。
くわしくは経営業務管理責任者(経管)、経営業務の管理責任者(経管)に準ずる地位とは、過去の許可で経管の証明をすることは出来るのか?もご覧ください。
2. 社会保険に加入していること
令和2年10月から、社会保険への加入が許可の要件になりました。新規だけでなく、更新のときも未加入なら許可を受けられません。
- 健康保険・厚生年金保険加入が義務の事業所なら、その届出をしていること法人は、社長1人だけでも給与(役員報酬)を受けていれば加入が義務です。個人事業は、常時5人以上の従業員がいる場合に義務になります。
- 雇用保険労働者を雇っていれば、その届出をしていること役員や事業主本人、その同居の家族だけの場合は対象外です。
許可の要件として見られるのは、加入が義務の営業所ごとに「事業所としての届出」をしているかどうかです。くわしくは社会保険加入についてをご覧ください。
申請で用意する書類の見本
申請のときは、次のような書類で社会保険・雇用保険の加入を確かめます(会社の状況によって、要る書類は変わります)。どの書類が必要かは、建設業許可の必要書類でご確認いただけます。

- 1会社名
- 2何月分の保険料か(直近のもの)
- 3金融機関の領収日付印

- 1会社名・所在地
- 2適用年月日(社会保険の適用事業所になった日)
- 3年金事務所からの通知であること

- 1労働保険番号(建設業の会社は頭が「433」のもの)
- 2事業の名称・所在地
- 3労働局の受付印(電子申請の場合は、受付が確認できるもの)

- 1労働保険番号(申告書と同じ「433」の番号か)
- 2納付額
- 3金融機関の領収日付印

- 1事業所の名称
- 2設置年月日
- 3ハローワーク(公共職業安定所)の受付印
※ 見本は架空の内容です。実物とは配置や項目が少し異なる場合があります。画像を押すと大きく表示されます。
3. 営業所ごとに営業所技術者がいること
見積り・入札・契約は営業所で行われるため、営業所ごとに、許可を受けたい業種の知識や技術を持つ人を専任(常勤)で置く必要があります。令和6年12月に「専任技術者」から「営業所技術者」に名前が変わりました。
一般建設業の場合(どれか1つ)
- 許可を受けたい業種の国家資格などを持っているいちばん確実な方法ですどの資格でどの業種が取れるかは、取れる業種の診断で確かめられます。
- 指定学科を卒業し、高校卒業後5年以上、または大学・高等専門学校卒業後3年以上の実務経験がある学歴+実務経験専門学校の指定学科を卒業した場合は5年以上(専門士・高度専門士なら3年以上)です。
- 施工管理技士の第一次検定に合格し、合格後に1級は3年以上、2級は5年以上の実務経験がある令和5年7月からの認め方検定の種目に対応する業種に限ります。
- 学歴・資格を問わず、許可を受けたい業種の実務経験が10年以上ある実務経験だけで認められる方法10年分の実務経験を、工事の契約書や注文書などで証明する必要があります。
特定建設業の場合
特定建設業の許可が必要になるのは、元請として受けた工事で、下請に出す代金の合計が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になる場合です(令和7年2月に4,500万円・7,000万円から引き上げ)。特定建設業の営業所技術者は、次のどちらかにあたる必要があります。
- 1級の施工管理技士や技術士など、国土交通大臣が定める国家資格を持っている指定建設業の7業種は、原則これが必要
- 一般建設業の要件を満たし、元請として請けた請負代金4,500万円以上の工事で、2年以上の指導監督的な実務経験がある指定建設業以外の業種で認められる方法「指導監督的な実務経験」とは、工事現場主任や現場監督者のような立場で、工事の技術面を全体的に指導監督した経験です。この4,500万円は、経験として数える工事の大きさの基準で(建設業法施行令第5条の3)、上の下請代金の基準(5,000万円)とは別のものです。
指定建設業とは、土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業の7業種です。
営業所技術者も、常勤であることを確認されます
営業所技術者は、その営業所に常勤している必要があります。ほかの会社の社員として常勤している人や、ほかの営業所の技術者を兼ねている人は認められません。申請のときは、経営業務の管理責任者と同じく、年金事務所から届く「標準報酬決定通知書」などで、この会社の健康保険・厚生年金保険に入っていることを確認します。

- 1会社名・所在地が、申請する会社と同じか
- 2経営業務の管理責任者・営業所技術者の名前が載っているか
- 3年金事務所からの通知であること
※ 見本は架空の内容です。実物とは配置や項目が少し異なる場合があります。画像を押すと大きく表示されます。
営業所技術者も、いなくなると許可の取消しの対象になります。交代するときは2週間以内に届け出が必要です。くわしくは営業所技術者(旧:専任技術者)、専任技術者がいなくなったらどうする?をご覧ください。業種ごとの工事の内容は建設業許可の29業種一覧と工事例で確かめられます。
4. 財産的基礎があること
工事を始めるには、資材の購入や人の確保などに一定の資金が要ります。そのため、許可が必要な規模の工事を請け負えるだけの財産があることが要件になっています。原則として、申請の直前の決算の財務諸表で確認されます。
次のどれか1つ
- 自己資本(純資産の合計)が500万円以上
- 500万円以上の資金を調達できる(金融機関の残高証明書など)
- 申請の直前まで、許可を受けて5年以上続けて営業している(更新の場合)
次のすべて
- 欠損の額が資本金の20%を超えていない
- 流動比率が75%以上
- 資本金が2,000万円以上で、かつ自己資本が4,000万円以上
特定建設業の要件が重いのは、多くの下請業者を使い、発注者から代金を受け取っていなくても下請代金を支払う義務があるためです。一般と特定の違いは一般建設業と特定建設業の違いとは?で解説しています。
5. 誠実性があること
請負契約の締結や履行で、不正な行為や不誠実な行為をするおそれが明らかな場合は、許可を受けられません。会社だけでなく、役員や支店長などの重要な立場の人も対象です。
- 不正な行為:請負契約の締結や履行での、詐欺・脅迫・横領など法律に違反する行為
- 不誠実な行為:工事の内容・工期などについて、請負契約に違反する行為
建設業法や建築士法、宅地建物取引業法などで、免許の取消しや営業停止の処分を受けて5年を経過していない場合も、誠実性がないと判断されます。営業停止の処分については営業停止期間中は何ができる?をご覧ください。
6. 欠格要件にあたらないこと
次のどれかにあたる場合は、許可を受けられません。会社の場合は、役員や支店長なども対象です。
- 許可申請書や添付書類に、うその記載がある、または重要な事実の記載が欠けている
- 破産して、復権を得ていない
- 心身の故障により、建設業を適正に営むことができない(成年被後見人・被保佐人であることだけでは、欠格にはなりません)
- 不正な手段で許可を取ったなどの理由で許可を取り消され、5年を経過していない
- 許可の取消しを逃れるために廃業の届出をし、5年を経過していない
- 営業停止を命じられ、その期間が終わっていない
- 拘禁刑以上の刑(以前の懲役・禁錮)を受け、刑の執行が終わるなどしてから5年を経過していない
- 建設業法や暴力団対策法など特定の法律に違反して罰金刑を受け、5年を経過していない
- 暴力団員である、または暴力団員でなくなってから5年を経過していない
許可の取消しと5年間の制限の関係は、実際にあった建設業許可の取消し事例でくわしく解説しています。
営業所について
建設業法でいう「営業所」とは、本店・支店や、常に建設工事の請負契約を結ぶ事務所のことです。申請のときは、実際に営業できる事務所であるかを、写真などで確認されることがあります。
- 契約の締結などができる事務スペースがあり、ほかの会社や住居と明確に区切られている
- 電話・机・事務用品など、営業に必要なものがそろっている
- 契約を結ぶ権限を持つ人(本店なら代表者など、支店なら支店長など)と、営業所技術者が常勤している
くわしくは営業所の要件をご覧ください。
よくあるつまずき
- 経営の経験は5年以上あるが、その期間の書類が残っていない経験は、書類で証明できて初めて認められます確定申告書、工事の契約書・注文書・請求書など、どの書類が残っているかを早めに確かめましょう。
- 経営業務の管理責任者・営業所技術者になる人が、ほかの会社にも勤めている常勤と認められず、要件を満たせませんほかの法律で「専任」が求められる立場(管理建築士など)にある場合も、原則として兼ねられません。
- 直前の決算で、自己資本がマイナスまたは500万円未満残高証明書で500万円以上を示す方法があります
- 社会保険の手続きをしていない加入の手続きを済ませてからの申請になります
- これまで許可がないまま500万円以上の工事をしていた悪質でなければ、新しく許可を取ることはできます軽微な工事を超える実績がある場合、許可申請できる?をご覧ください。
要件を満たしているかどうかは、書類で証明できるかどうかで決まります。「経験はあるのに書類がない」という場合も、ほかの書類で証明できることがありますので、あきらめる前にご相談ください。
要件を満たしているか、まずは確かめたい方へ
- 取れる業種の診断:資格や経験から、取れる業種を確かめられます
- 建設業許可の必要書類:申請に必要な書類を一覧で確認できます
- 知事許可と大臣許可の違いとは?:営業所の場所で、許可を出すところが変わります
- お電話でのご相談:096-283-6000(ご相談・要件チェックは無料)
参考資料
- 熊本県「建設業許可の手びき」
- 建設業法 第7条・第8条・第15条・第29条、建設業法施行規則 第7条



