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実際にあった建設業許可の取消し事例|取り消される場合と5年間の制限

監修:行政書士 渡邉徳人(行政書士事務所WITHNESS 代表・熊本県行政書士会 第05430405号)最終更新日:

建設業法に違反すると、許可を出した国土交通大臣や都道府県知事から「監督処分」を受けます。処分は軽い順に、指示処分・営業停止処分・許可の取消しの3段階です。

営業停止処分なら、期間(最長1年)が過ぎれば営業を再開できます。しかし許可を取り消されると、500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事が請けられなくなり、公共工事の入札にも参加できなくなります。取消しの理由によっては、その後5年間、許可を取り直すこともできません。経営へのダメージは、営業停止とは比べものになりません。

このページでは、どんな場合に許可が取り消されるのかを整理したうえで、実際にあった取消しの例と、処分までの流れ、取消しを防ぐためのポイントを解説します。

許可が取り消されるのは、どんなとき?

建設業法第29条では、次のような場合、許可を必ず取り消さなければならないと定めています。行政の裁量で見逃されることはありません。

  • 経営業務の管理責任者(常勤役員等)や営業所技術者がいなくなり、許可の要件を満たさなくなった取消し(第29条第1項第1号)退職・死亡・常勤でなくなった、などで後任がいない場合です。要件を満たせなくなる原因でいちばん多いのが、この常勤性の問題です。
  • 役員などが欠格要件にあたるようになった取消し(第29条第1項第2号)役員が拘禁刑以上の刑を受けた、建設業法違反などで罰金刑を受けた、暴力団員である(やめてから5年以内を含む)、などです。
  • うその書類など、不正な手段で許可(更新を含む)を受けた取消し(第29条第1項第7号)経営業務の管理責任者や営業所技術者の「名義貸し」は、これにあたります。
  • 違反の情状が特に重い、または営業停止の処分に違反して営業した取消し(第29条第1項第8号)営業停止については、営業停止期間中は何ができる?で解説しています。
  • 許可を受けてから1年以内に営業を始めない、または1年以上営業を休んだ取消し(第29条第1項第4号)

このほか、許可に付けられた条件に違反したときも、取り消されることがあります(第29条第2項)。

取り消されると、どうなる?

同じ「取消し」でも、理由によってその後の扱いが大きく違います。

要件を満たさなくなった場合など

要件を整えれば、取り直せる

経営業務の管理責任者や営業所技術者がいなくなったことによる取消しは、5年間の制限がありません。要件を満たす人をそろえれば、新しく許可を申請できます。

ただし、取り直すまでの間は、軽微な工事しか請けられません。

不正な手段・情状が特に重い場合

5年間、許可を受けられない

名義貸しなどの不正な手段や、情状が特に重いことによる取消しは、取消しの日から5年間、会社は許可を受けられません(第8条第2号)。

役員なども5年間、その業種で新しく営業を始めることが禁止されます(第29条の4第2項)。その人を新たに役員に迎えた会社も、同じ業種の許可を受けられません。

取消しの前に廃業届を出しても、逃げられません

取消しの聴聞の通知を受けた後に廃業の届出をしても、届出の日から5年間は許可を受けられません(第8条第3号)。聴聞の通知の日の前60日以内に役員だった人も同じです(第8条第4号)。

取消しの処分は国や県が公告し、だれでも見られるようにされます(第29条の5)。元請や取引先、金融機関からの信用にも大きく響きます。

実際にあった取消しの例:経営業務の管理責任者の常勤性

許可の取消しで問題になりやすいのが、経営業務の管理責任者や営業所技術者の「常勤性」です。実際にあった例を紹介します(内容は一部変えています)。

  1. 新規の許可

    経営業務の管理責任者の常勤性も確認され、問題なく許可を受けました。

  2. 経営業務の管理責任者が退職

    更新の前に退職することになりました。役員の中に要件を満たす人がいなかったため、経験のある人を新たに役員に迎え、経営業務の管理責任者として更新を申請しました。

  3. 更新は受理された

    ところがその後、この人が建設業とは別の許可で「常勤の管理者」として届け出られていることがわかり、常勤性を疑われました。

  4. 許可の取消し

    実際には常勤していない人を経営業務の管理責任者として更新を受けたことになり、虚偽申請の疑いから約2か月で取消しの処分が決まりました。

2番目までは、どこの会社にもよくあることで、それ自体は問題ありません。問題は、新しく経営業務の管理責任者になる人の状況を、その時点でくわしく確かめなかったことです。

この会社は、他社の建設業許可で経営業務の管理責任者や営業所技術者として届け出られていないかは確かめていました。しかし、建設業以外の許可で常勤の管理者になっていることまでは想定していなかったようです。ほかの法律で「専任」や「常勤」が求められる立場(たとえば、建築士事務所の管理建築士、宅地建物取引業の専任の宅地建物取引士など)にある人は、原則として経営業務の管理責任者や営業所技術者を兼ねられません。同じ会社の同じ営業所なら兼ねられる場合もありますが、届出前に必ず確かめる必要があります。

行政書士には、相談の段階から事実をありのままお話しください

行政書士は、依頼人からうかがった内容とお預かりした資料をもとに、申請書類を作ります。経歴や勤務の状況などを意図的に隠されたり、事実と違う説明をされたりすると、それを事実(前提)として申請することになります。

その内容が本当かどうかは、依頼人から正直に伝えていただかない限り、行政書士には知りようがありません。この例も、申請の前提となる事情が正しく伝えられていなかったことによる取消しで、書類の作成や手続きの誤りによって取り消されたものではありません。

当事務所では、ご相談の段階で、経営業務の管理責任者や営業所技術者になる方のほかの勤務先や、ほかの許可・登録での届出の状況もおうかがいします。不利に思えることも含めて正直にお話しいただくことが、許可を守るいちばんの近道です。行政書士には法律上の守秘義務がありますので、安心してご相談ください。

疑いが出てから取消しまでの流れ

  1. 本人の事情聴取

    まず、経営業務の管理責任者になった本人が県庁に呼ばれ、経緯を聞かれます。

  2. 代表者の事情聴取

    次に、会社の代表者が呼ばれ、同じように事情を聞かれます。2人の説明に食い違いがあれば、そこを厳しく確認されます。

  3. 営業所への立入調査

    営業所の実態も調べられます。契約書や書類がどれだけきちんと整っていても、常勤していなかった事実は変わりません。

  4. 聴聞の通知・聴聞

    後日、聴聞の通知が届き、指定の日に出頭して最後に意見を述べることができます。行政書士などの専門家を代理人にすることもできます。結論が変わらない場合は、連絡をして出頭せずに処分を受け入れることもできます。

  5. 取消しの処分・公告

    処分が出るまでは、許可業者として営業できます。この例では、疑いが出てから約2か月で取消しが決まりました。

「知らなかった」と謝っても、処分が軽くなることはありません。取消しの理由にあたる事実がある以上、結論はほぼ変わらないと考えてください。

名義貸しは、許可の取消しだけでは済まない

常勤していない人を経営業務の管理責任者や営業所技術者として届け出る「名義貸し」は、許可の取消しに加えて、刑事罰の対象にもなります。

  • うその事実にもとづいて許可(更新を含む)を受けた3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金会社にも1億円以下の罰金が科されます(第47条第1項第5号・第53条)。
  • 許可申請書や添付書類にうその記載をして出した6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金変更届出書などにうその記載をした場合も同じです(第50条)。

建設業法違反で罰金刑を受けると、刑の執行が終わってから5年間は許可を受けられません(第8条第8号)。名義を貸した人も、うその申請に加わった者として責任を問われることがあります。

取消しを防ぐために、確かめておきたいこと

  • 経営業務の管理責任者・営業所技術者が、本当に常勤しているか:他社の役員・社員として常勤していないか、ほかの法律で専任・常勤が求められる立場にないかを、就任前に本人に確かめる
  • 退職・交代の予定を早めにつかむ:後任が決まらないまま退職すると、許可の要件を満たさなくなります。役員の任期や年齢も含めて、後任の候補を早めに考えておく
  • 交代したら2週間以内に届け出る:経営業務の管理責任者や営業所技術者が代わったときは2週間以内に届出が必要です。要件を満たさなくなったときも、2週間以内に届け出なければなりません(建設業法第11条・同法施行規則)
  • 毎年の届出を欠かさない:決算後の変更届出書(事業年度終了)を出していないと、更新の申請ができません

退職や交代が決まった段階でご相談いただければ、要件を満たす人がいるか、届出の時期はいつかを一緒に確かめます。

経営業務の管理責任者・営業所技術者の交代や、要件に不安がある方へ

参考資料

  • 建設業法 第7条・第8条・第11条・第29条・第29条の4・第29条の5・第47条・第50条・第53条
  • 熊本県「入札・契約に関する各種規定」の「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」(令和8年2月施行)

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